2008年12月10日水曜日

『ゴールド ― 金と人間の文明史』(ピーター・バーンスタイン)

いま世界では「100年に一度」のたいへんなことが進行中。こういう事態を生きているうちに体験し歴史の証人となれる現代人は幸運である。ワールドカップより面白い。でもそのためには少しは勉強したほうがいい。そういう意味でこの本はとてもおすすめ。



古代エジプトからグリーンスパン時代まで、世界の歴史を「ゴールド(金)」というキーワードで実に細かく解説した本。著者の博覧強記ぶりはすごい。裨益すること多大。人類の歴史は「ゴールド(金)」を巡るバカ騒ぎの歴史であったことを再認識できる。

ひとつちょっと気になった点。バーンスタインは有史以来、人類はゴールドの束縛から逃れなかったことで多大の災難が引き起こされた、世界が金本位制から離脱したことこそ「進歩」であったとする歴史観に立つこと。

人類の歴史は数千年。世界が金本位制を完全に離脱したのはニクソンが勝手に決めたことで、金から離れた変動為替制度は数十年の歴史しかない。ゴールド(金)の束縛から逃れたことが世界の安定的な経済成長をもたらしたことは認めるが、同時に「ゴールド(金)」のタガが外れたことで世界経済は風船のように舞い上がってしまったとも言えるのではないか。ゴールド(金)の制約があったのなら、これほどまでバブルを膨らますことはなかったのではないかとも思う。

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